馴化された獣動物達

最近発表されたメキシコレコード業界の中で傑出した作品、
エベルト・バスケスの動物寓話集。響きによる“おとぎ話”

 

エベルト・バスケス(モンテビデオ 1963-)の作品は、その流麗さ、透明感、明晰さから、メキシコ現代音楽界では飛び抜けた存在だ。
バスケスが最近最も労力を費やした作品は、"動物寓話集"と名付けられた室内楽作品集である。
演奏は、ギタリスト佐藤紀雄がアーティストディレクターを務める非常に優れた日本のアンサンブル、"アンサンブル・ノマド"が担当している。
幻想的な獣たちによってインスピレーションを得たこの動物寓話集の全6作品は、その名前にもかかわらず非常に配慮の行き届いた音の世界を構築し、獣的なだけではなく、むしろはっきりとした拍子感覚が作品全体を支配しているのは議論の余地がない。
しかしながら、原典の内容を彷彿とさせる描写も盛り込まれており(明らかにバスクラリネットのデユオにおける ゴーレムのファイナル)、バスケスはユニゾンとオスティナート技法の様式を強調させながら、広範囲にリズミカルな動きへの探求を大切にしている。

また、この作品集における別要素としては、その繊細な書法にあると言える。
特に管楽器に対しては、典型的なクラシック奏法と、型にはまらない現代奏法における微妙な使い方を組み合わせているのである。
このCD全体を通して、近い過去の音楽に覆い隠されたベールの底からウィンクを投げかけてくるのに出くわすのである。
それは我々の耳に微笑みかけるような小さなオマージュとでも言えるだろうか。
例えば、ガーシュイン、ストラビンスキー、ナンカロウ、ペレスプラド、等である。
またはこれらとは別に、正にアジア的な響きの世界を我々に与える"クラーケンの夢"の序奏のように、そこまでベールに被されていないものもある。

もしかするとこの作品集の中での宝石とも言える"マックスウェルの悪魔"(驚くべきことに、一刻ごとに"ジエラール・グリゼーの時の渦 ヴォルテックス・テンポラム"の冒頭を思い出させる、と同時にはラベルの曲の推敲をも連想させる)は、果敢にそして魅惑的に問題提起に取り組むことによって、この作品集をまとめあげているかの様である。
レコードの小冊子に作曲家が書き示しているように、"何はさておき、この動物寓話集はおとぎ話の一つ"なのである。

バスケスは、物語的な音楽へと再びいざなってくれる。
つまりバスケスは、我々の中では最も多作で確実な作曲家達の中の一人として、文学への想像を音楽的に近づけることの最良の形を、我々の前に実際に体現してくれるのである。

ウィルフリード・テラーサス